2010年5月17日月曜日

都のぼりの歌

私の住んでいる横に猿丸という地所がある。
空き家になった縁側で一人お爺さんが座っていた。
車をとめて声をかけてみた時お爺さんが話してくれた

「なあ、あんた猿丸大夫という方知っているか。
万葉集にあるわな。その人ここに住んどったんや。都からここまで流されたんだとさ。
ほらあの高い所に住んでいて今でも行くと基礎の後や畑の形があるわ。
村ん衆は、えらい方が来たってんで、京の話や、相談事、病気になったら聞いたりしていた。
なんで、こんなとこまで来たかは知らないけんど、なんでもその人の足は鹿の足だったんだと。その人の名前をとってここが猿丸になったんや。」

本当か知らない。聖徳太子の孫とも噂されるが、事実なら高貴な家柄であったのだろう。
そんな家に足の悪い子が産まれた。当時の習慣はよくは知らないが忌み嫌う事だっただろう。何とか命だけは、と遠いこの地に送られたのかも知れない。村の中でも住み難そうな彼のすまいから眺める先は奈良の方向だ。でもいくら目を凝らしても見えることは無い。それでも都に憧れていたかったのかも知れない。

奥山丹黄葉踏別鳴鹿之音聆時曾秋者金敷
おく山に もみぢふみわけ なく鹿の こゑきく時ぞ 秋はかなしき
小倉百人一首 五番(かなしきも掛詞になっている事今回初めて気付いた、、)

続けて話してくれた。
「この家は俺が建てたんだ。息子も嫁をもらい孫も出来た。良かったなあん時。ある日その下のトンネル車にひかれ嫁は死んでしまった。息子はここに住みたくないと町に行った。今日は宮の神様の用で来たけど。この世には、全く神も仏もいないな。」と深いため息をついた。

なんでそんな話を通りすがりの私にしたのか、わからない。
でも、神はいる。昔からおられ、今もいまし、のちに来られる方

猿丸さん、あなたも都に憧れたのですか。この世には悲しみや苦しみは絶えることがない
だからこそ、私も憧れます。きたるべき世に その都に


ルカ19:41 エルサレムに近くなったころ、都を見られたイエスは、その都のために泣いて、
ヘブル13:14 私たちは、この地上に永遠の都を持っているのではなく、むしろ後に来ようとしている都を求めているのです。
詩87:3 神の都よ。あなたについては、すばらしいことが語られている。

猿丸が住んだと言われた小山

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