2010年3月2日火曜日

あの「こ」

長野に来るときに身重だった妻が産んでくれた次女は今年成人式を迎えた。育て方は、間違えてしまいましたが、3人ともいい子で大人となってくれた。
あのとき、勘当され、車一台で親戚も住むところもない長野に来て20年神様は本当に良くして下さり、いつもその手の業を祝福してくれた。
板一枚切った事のない者に、家を作らせる喜びを与えてくれいつも私に過分にしてくださった。
神の性質の一つに「公正」があると言われたりするが、いつも神はえこひいきしてくださるように感じる。

少し前までうちでは鶏を飼っていた。
最初は農協から買ったが、その産んでくれた卵を孵していつからか、全てのニワトリが、うちでかえったものになった。
ほとんどは問題がなくスクスクと育ってくれたが、中には体の弱い「こ」もいて、餌をうまく取れず競争に遅れてしまった。
すると、その「こ」をいつも気にかけるようになり、出来るだけその「こ」の近くに食事の残りの野菜などを投げてやるようになる。
するとその「こ」もモタモタしながらもすり寄るようになってきた。
するとますますその「こ」が、可愛くなってくる。うちの子供達は手の中にポトリと卵を産んでもらった事がだいたいみんなある。
とても暖かくまるで透き通るようなその卵をご飯にかけるときは、ただ有り難く思いながら食べさせていただく。
その「こ」もはじめは、そのような卵のひとつだった。
他に一緒に孵ったこが鶏冠ができてきたころ、その「こ」の成長が止まりあまり食べなくなった。
朝、うずくまっていることも多く、元気がない。
まだ、寒いときでもあったので(卵はだいたい2月に産んだ卵から雛を育てる)薪ストーブの横に段ボールを置いてそのですごさせた。
その日からリビングがその「こ」の居場所になった。
潰した餌や、水を飲ませてもらい、だいぶ元気になりある時はソファーの上に羽ばたくほどに元気になって、そのころ同じリビングで、猫や犬たちと歩いていてそれは、本当に微笑ましい光景だった。
でも、生まれつき体の弱かったその「こ」は、そのあとガクンと元気がなくなり、ある朝、一番その「こ」を可愛がっていた、息子が起きてきていつものように挨拶するのを、待って、息子の手の中で息子の目を見上げて頷くように息を引き取った。
その日の朝は息子がその「こ」を抱きしめたまま、ずっと嗚咽していた。
わたしは「帰ってきたら、この「こ」に墓をつくろうな」と声をかけ、
家内に「中学校に今日はむすこを休ませるよう電話しておいて」といって仕事に出た。
授業に出るよりも、その一羽のニワトリの為に一日泣く事の方が良いと思った。
仕事が終わって家の回りから息子に墓石にふさわしい石を一つ選んでもらいその石のしたにその「こ」を埋めた。

その時から私にとってニワトリはもはや家畜ではなくペット(ペットは家族と近い存在である)と言ってもおかしくない存在になった。
他のニワトリたちが年を取ってもう卵も産まなくなっても、「今まで沢山卵を産んでくれたからなー」と
最後の時が来るまで全てのニワトリを家では面倒を見させてもらうことになった。
「まるで家はニワトリの養護老人ホームみたいだ」といいながら、、、、

今でもその近くの梅の花が咲く頃その近くにある石を見て思うことがある。
天国ではまたあの「こ」に会うことあるのかなと、
私には、良くはわからないが、とにかく神のなさることはすべて時にかなって美しいのだ。
天国では、あの「こ」がリビングで元気に駆けていた時以上にすばらしいのだから。
寒さの厳しいこの地方では、梅と桜がほとんど一緒に咲くそれは春を告げ知らせてくれる景色である。
それは長い冬を抜けて春を迎える事の喜びそのものです。

見よ、冬は過ぎ、雨もやんで、すでに去り、

もろもろの花は地にあらわれ、鳥のさえずる時がきた。山ばとの声がわれわれの地に聞える。

いちじくの木はその実を結び、ぶどうの木は花咲いて、かんばしいにおいを放つ。わが愛する者よ、わが麗しき者よ、立って、出てきなさい。

3 件のコメント:

  1. 毎度どうもです。初めてお邪魔します。

    うちも猫がいますが、この猫一匹が家族にもたらした恩恵ははかり知れません。

    主の愛の深さや繊細さを示すモデルは私たちの周辺にあふれていますね。

    長野へもリアルに行かなくっちゃという思いを強くしました。

    奈良へも是非お越しください。

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  2. Saltさんコメントありがとうございます。
    少しずるいやり方になってしまいましたが、お許し下さい。
    3ヶ月めにして初めてコメントいただきました。(と言うことは人生初!)ありがとうございます。
    ただ、このツールに振り回されないよう楽しみたいと思います。
    人生を、モニターの上で過ごすことなく、私もSaltさんが日頃仰っているようにリアルに生きたい。
    そんな時、広く浅くなりがちなネットというツールは気を付けて、限りある時間をゆうこうに使いたいと思います。
    また、ご指導ご鞭撻ありましたらよろしくお願いします。

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